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はじめに

 カイメンは細胞単位で生きている動物で組織も器官もないこともあって、最も下等な多細胞動物であるといわれています。カイメンは分類上、海綿動物門という門にひとくくりにされますが、海綿動物門はさらに四つの綱、つまり同質海綿綱(Homoscleromorpha)、石灰海綿綱(Calcarea)、六方海綿綱(Hexactenellida)、尋常海綿綱(Demospongiae)に分けらます。

 この四つの綱に属するカイメンは、もちろんどの綱のカイメンも日本の海から知られていますが、では、その種類はどれくらいあると考えたらよいでしょうか?最近発表された論文(Ise  2017)で、四つの綱を合わせた海のカイメンの種類数は種と亜種を合わせておおよそ 630 ほどあることが明らかになりました。それらすべてを紹介することは困難なので、このサイトでは主として磯またはごく浅い海に棲む種だけを対象として紹介することとしました。そのため、紹介するカイメンはほぼ石灰海綿綱と尋常海綿綱になっています。いまはまだ紹介出来る種類は多くありませんが、今後も紹介出来る種を増やしてゆく予定です。

カイメンの体の作りと機能

      カイメンの体は三層の構造からなっており、最も外側には外扁平細胞からなる外皮細胞層と呼ばれる部分があります。この外皮細胞層には多数の小孔があってこれは胃腔、大孔へ通じています。小孔から入って胃腔に通ずる層は内扁平細胞が並んだ内皮細胞層があり、ここに鞭毛を備えた襟細胞が並んでいます。外皮細胞層と内皮細胞層の間にはゲル状物質を含んだ無構造な中膠と呼ばれる組織がありますが、ここには骨片と呼ばれるものや海綿質繊維が含まれ、カイメンはそれによって体を支えています。(図1)

 カイメンは襟細胞にある鞭毛の運動によって水流を起こし、小孔から海水を引き込んでいますが、その海水とともにカイメンの体内に引き込まれたプランクトンや

図 1 カイメンの体構造模式(矢印は水流)

 他の微生物などの懸濁有機物がこの鞭毛によって捕捉され、カイメンの栄養となっています。懸濁有機物が取り除かれた後の海水は、大孔を通じてふたたびカイメンの体外へ排出されます。また、襟細胞では酸素の取り込みも行っています。

 中膠層にあってカイメンの体を支える骨片などの物質は石灰質骨片、珪酸質骨片、海綿質繊維の三つに大別されますが、種ごとに特定の物質を含み、特有の形態を示すこともあって重要な分類形質となっています。

文献
Ise, Y. (2017) Taxonomic review of Japanese sponges (Porifera). In Species diversity of animals in Japan, Motokawa and Kajihara (eds.),
  Springer, Berlin: pp. 343 - 382. 
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